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【対談企画】社長×人事マネージャー 「100人の壁」をどう乗り越える?

こんにちは!note編集部です。

読者の皆さんは「100人の壁」という言葉をご存知でしょうか? 組織が一定人数に達した際、スタートアップやベンチャー企業が直面する課題の一つで、マネジメントやコミュニケーションに問題が生じる現象のことです。創業から16年を迎えたオープンワークは、9月に社員90人を超えました。

社員100人規模が現実味を帯びてきた9月某日、編集部メンバーでもあり、人事マネージャーの松元が社長の大澤を会議室に呼び出しました。「今このタイミングで、どうしても社長に聞いておきたいことがあります」。神妙な面持ちで松元が切り出したこととは…? 二人の秘密(?)会談の様子をお送りします。

松元)
お疲れさまです。今日はどうしても大澤さんと話したいことがあります。

大澤)
…はい。よろしくお願いします(松元さん、どうしてサウナハット被ってるんだろう…)

松元(右)の頭には愛用のサウナハットが…


松元)
今日は踏み込んだ質問をしたいので、サウナにいるかのような雰囲気でインタビューさせてください。まずはこれを(サウナハットを手渡す)。

大澤にサウナハットを手渡す松元。困惑する大澤。

大澤)
えっ…。まぁ、被るだけなら…

サウナハットを被る大澤。饒舌になる松元。

事業の多角化による組織拡大。「業務過多疲弊症」を避けるために


松元)
突然ですが、オープンワークの社員数もようやく100人が視野に入ってきましたよね。大澤さんがオープンワークにジョインした2018年は30人程度。その翌年に私も入社しましたが、それでも社員数は50人ほどでした。オープンワークとして「社員100人」という一つの節目を前に、今向き合っている組織課題を教えてください。

大澤)
もともと、オープンワークがクチコミサイトとしてCGM(Consumer Generated Media)を中心に回す事業方針で、「あまり社員を増やす必要はない」というのが経営陣共通の見解でした。必要最低限のメンバーで、クチコミサイトとしての品質や生産性を重視し、堅実に伸ばしていく考えでした。実際に、昨年上場する際につくった事業計画では、今年の社員数は90人未満での着地を見込んでいました。

ところが、今のオープンワークには新しい社員が続々と増えています。年末にも社員が100人を超えるかもしれません。

こうした変化の背景には、事業の多角化があります。クチコミサイトとしてだけでなく、OpenWorkリクルーティングによる企業と個人のより良いマッチングのサポート、そして、海外・国内の機関投資家向けのデータベースサービス、新しいプロダクトサービスの企画も始まっています。事業が多角化する組織にふさわしいチームをつくるため、外部からも積極的に人材を採用するようになりました。

松元)
事業が多角化する組織にふさわしいチームとは、具体的にはどんなチームなのでしょうか?

大澤)
特定の人に業務が集中し、コミュニケーションが滞ることのない組織です。

事業の拡大や多角化に伴い、一般的に組織内で起きるとされているのが「業務過多疲弊症」です。特定の人が複数のプロダクトに引っ張りだこになったり、プレイヤーとマネージャーを兼務する人が出てきたりする。その結果、量・質ともにコミュニケーションに課題が生じる、そんな状況です。組織のコミュニケーションを血流に例えると、全身に血がめぐっていない状態ですね。

松元)
コミュニケーションが滞ると、「会社の方針がよくわからない」「ちゃんと評価されていない気がする」と感じる人が出てしまう。一般的に起こりやすい課題だからこそ、オープンワークも無関係ではないですね。

大澤)
そうですね。そのためにも、こういった「病気」を防ぐ組織の編成に変えていくべきです。

これまでオープンワークでは、営業やデザイン、エンジニアなど機能別の組織に対し、プロジェクトを横串で走らせていました。機能×PJ別編成のマトリクス型組織と呼んでいます。ただ、これだとどうしても兼務が増えてしまいます。

こうした問題を解決しやすい構造にするため、将来的には、機能別の組織から事業部別の組織に変えていきたいと思っています。「CGMに集中するチーム」「OpenWorkリクルーティングのキャリア採用に集中するチーム」など事業ごとに組織を編成する方針です。各事業部にトップを置くことになるので、兼務や業務の偏りを解決しやすい構造になります。

退職者から学ぶ、コミュニケーション不足の弊害


松元)
OpenWorkリクルーティングの立ち上げ後も急激に社員が増えましたが、実は当時もコミュニケーション上の課題がありましたよね。

大澤)
そうですね。当時はCGMサイト1軸からマッチングサービスの2軸への移行期で、一部のマネージャー層に経営方針が伝わらず退職を招いてしまいました。この1、2年も一定の退職者が出ていますが、やはり共通するのはコミュニケーション不足です。当時ちゃんと話せていたら防げた退職はあったと思います。前向きな選択や新しい挑戦のための退職なら別ですが、大前提として、やはり望まない退職はなくしたいです。

私が今懸念しているのは、リモートワークをメインに働く社員が多いこともあり、組織の拡大に伴い、現場と私の距離が離れてしまうことです。私と最終面接で話してから、入社後一度も話していないという方がいるのは事実です。本来はマネージャーやラインを飛び越えるのは良くないかもしれませんが、私から直接現場と話す機会をつくるのも良いかなと思っています。

松元)
社員100人に満たない規模感だからこそできることですね。ただ、それだと組織がもっと大きくなった時に難しくなりませんか?

大澤)
事業部別の組織になれば、各事業リーダーがプロダクトのロードマップや要員計画を作成することになります。権限移譲が進むことで、ビジョンやミッションがメンバーに伝わりやすくなります。

部門を超えた協業も必要ですね。事業が多角化している会社で新しいプロダクトが生まれると、私もメディアの取材などで話題にする機会が増えます。

ただ、そのプロダクトがまだ収益化できていなかったりすると、稼ぎ頭である既存事業のメンバーが「赤字のプロダクトばかり注目されるのは面白くない」と感じるかもしれません。こういった問題は一般的に起きやすいとされ、部門間が協力しなくなり、全社的な視点が欠落しやすくなってしまいます。

こうしたことが起きないよう、社内を統合する機会を意図的につくりたいと考えています。部門や職種を超え、新しいサービスを企画するハッカソンを年末に開催する予定です。

社員の学びの機会を創出。育成にこだわる組織へ


松元)
採用を増やしているオープンワークですが、今いる社員の育成にはどのように向きあっていきますか?

大澤)
オープンワークは「さあ、自由に生きよう。働きがいをすべての人へ」というコーポレートスローガンを掲げていますが、「働きがい」は転職や就職だけで得られるものではありません。今いる会社でどんな経験やスキルを身につけ、積み重ねた結果、次のジョブを探す時に選択肢が増えていけば、心身とも良好で、仕事や会社に対して満足度や幸福度が高い状態となるのではないでしょうか。

まずはオープンワークみずから、社員に対して実践しないといけません。これまで以上に育成にもこだわっていきたいです。

松元)
具体的に考えていることはありますか?

大澤)
例えば、事業拡大を行う過程で新たな機能やサービスを導入する機会を積極的につくり、新たな学びの機会を得ることができるようにしたいです。社員が学び直したい時に学び直せるチャンスがあり、そういった社員が適切に評価される組織をつくり、社会にも提供していきたいです。

松元)
オープンワークの行動指針「Action Style」には、土台となる考え方の「Direct yourself」があります。「組織に依存するのではなく、自分で自分を動かそう」という意味ですが、やはり育成方針でもこの考え方が根幹にありますか?

大澤)
それはこだわっていますし、それが素地にある人でないと本当の意味での働きがいは得られないと思います。

もちろん、マネジメント層にも育成の役割を担い、組織の成果を最大化させるというミッションがあります。ただ、今後は日本型の雇用慣行である総合職採用や新卒一括採用はどんどん薄れていくと思います。ジョブ型雇用も広がり、「キャリアのオーナーシップは自分にある」という意識が強くなっていくのではないでしょうか。

松元)
若手のうちは特に、やりたいことが分からないという人は少なくありません。私はそれを引き出すのもマネジメントの役割だと思いますが、どう向き合うのがいいのでしょうか?

大澤)
世の中の大半の人は、やりたいことが分からないと感じているかもしれません。大事なのは「やりたいこと」よりも、「こうありたい」や「大切にしたいこと」を強く持つことだと思います。例えば、自分が携わるサービスが社会に役立っていると実感できる状態でいたい、といったことです。

また、やれること=canを増やすことも大切です。canが増えないと経験や選択肢は増えません。マネジメント層は、メンバーがありたい状態を見つけ、その上でcanを増やしていけるようサポートしていただきたいですね。

社長大澤が誰よりも組織にこだわる理由は…?


松元)
大澤さんは組織コンサルティング会社出身ということもあり、多くの会社を見てきたと思います。組織へのこだわりは人一倍強いと思いますが、それはなぜなのでしょう。

大澤)
世の中には、カリスマ型の経営者がいる企業と凡人型の経営者が経営している企業があります。これは私にとってコンプレックスでもありますが、私は前者ではありません。だからこそ、ミッションを実現するためには組織で闘わないといけないと経営者になる前から決めていました。

絶対的なカリスマや天才がいなくてもできることはあります。一人一人が組織に依存することなく、自分で自分を動かすことができ、学び、進化していくことで面白いプロダクトやサービスは生まれるのではないでしょうか。その大前提として、やはり「働きがい」にあふれた会社でなければいけません。今も、これからも、それが一番大事です。