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【特別対談】オープンワーク×神戸市 「辞めた人の声」を生かす組織づくり

こんにちは!note編集部です。

オープンワークでは月1回、全社総会「オープンブリーフィング(通称OB会)」を開催しています。普段は事業や組織の状況について共有する場ですが、四半期に一度程度の頻度で特別企画としてグループワークの開催や外部ゲストを招き、今後のビジネスについて柔軟に考える機会を設けています。

6月のOB会は、多様な人材獲得に取り組む神戸市の久元喜造市長をお招きし、オープンワーク社長・大澤陽樹とのトークセッションをオンラインで実施しました。実は、OpenWorkで神戸市の社員クチコミを読んでいただいているという久元市長。クチコミからみる自治体職員の働きがいや、神戸市が取り組む「辞めた人の声」を生かした組織づくりについて話を伺いました。

神戸市提供

久元喜造市長
1954年神戸市兵庫区生まれ。1976年東京大法学部卒業後、旧自治省入省。内閣審議官、総務省選挙部長、同自治行政局長などを経て2012年に神戸市副市長。13年に神戸市長に初当選。現在3期目。


「強みでありリスクにもなる」。大都市ならではの幅広い仕事

大澤)OpenWorkでは民間企業だけでなく、中央省庁や役所のクチコミもよく投稿・閲覧されています。私たちも行政や自治体の仕事、組織について理解を深めたいと思っています。まずは、神戸市の組織体制について教えてください。

久元市長)政令指定都市である神戸市の仕事は非常に幅広いです。福祉や医療だけでなく、港湾や市営地下鉄なども運営しています。神戸市で働きたいと思う方や実際に働いている職員にとって、さまざまな仕事を経験できることは強みでもあり、同時にリスクでもあると思っています。

 大)どのようなリスクでしょう?

久)これは大規模な自治体の特徴でもありますが、希望の部署に配属されるとは限らないということです。例えば、「三宮の再開発に携わりたい」「国際化に向けた整備が進む神戸空港に関わる仕事がしたい」と具体的なイメージを持って市職員になっても、すぐに希望通りの仕事を経験できないこともあります。OpenWorkの神戸市のクチコミでも、数年ごとに色々な仕事を経験できることに対しては、プラスとマイナスの両方の意見がありました。

大)逆に、小さな自治体や町村役場であれば職員一人あたりの守備範囲は広いのでしょうか?

久)そうです。小規模な自治体では部署を超えた横のつながりが見られます。例えば、税金の徴収業務の繁忙期には他部署の職員も総出で手伝う、なんてこともあるそうです。

市長執務室の待合室に社員クチコミを掲示

大)縦割りとは真逆ですね!組織を横断する仕事の仕方から神戸市から学ぶべき点はありますか?

久)神戸市は組織が大きく、仕事も細分化されています。縦割りゆえに行政サービスが非効率に陥ってしまう課題もあります。
どの自治体も、市民サービスを最大化しつつ、職員がやりがいを見つけ、効率的に仕事ができるか、頭を悩ませています。組織の形にとらわれない仕事の仕方を学んでもらうため、神戸市は兵庫県内の小規模な自治体に職員を派遣しています。

 大)私も学生時代に千葉県内の市役所で業務委託として働いたことがありましたが、当時の管理職も職員のモチベーション向上に悩んでいました。働きがいを増やすためにどんな手が打てますか?

久)私は、こういった問題を解決する上で参考になるのが、OpenWorkの社員クチコミだと思っています。職員が何にやりがいを見出し、何に不満を持って退職してしまうのかを把握・対応することで、離職の防止や優秀な人材の獲得にもつながります。幹部職員にも当事者意識を持ってもらいたいと思い、OpenWorkで興味深いと感じた神戸市のクチコミを一覧にし、市長執務室の待合室に掲示したんですよ。

大)それはすごい!市長は神戸市の社員クチコミを見た時、率直にどのような感想を持ちましたか?

久)特徴的だったのは、「数年おきに仕事や部署が変わるため別世界に行ってしまうようだ」「仕事ができる人のところに仕事が集中してしまう」といった投稿です。
仕事が細分化されて階層が多いと色々なことが起きます。ですが、神戸市は今、人口減少などの難しい課題を抱えています。市幹部と充分な意思疎通を図り、どういう意図でこの仕事をお願いしているのか、職員に納得して仕事をしてもらうことが重要だと感じています。

人材の多様化が組織を強くする。経験者採用比率を50%へ

大)地道に一つ一つ取り組むことが大切なのですね。神戸市は経験者採用にも力を入れていると伺いました。どのような狙いがあるのですか?

久)神戸市が目指すのは人材の多様化です。これまで事務系職員の大半が法学部や経済学部、経営学部などの出身でした。ですがこれからは、多様な人材の中で発掘される創造性がなければ、国際的な都市間競争に打ち勝つことはできないと考えています。

大)具体的にはどのような人材を求めているのでしょうか?

久)毎年4月に市役所に入る職員には、「大きな組織に迎合しないでください」と伝えています。バイオリンにピアノの音は出せないように、さまざまな音色が響きあって美しいハーモニーになります。職員のみなさんには、自分の音色を大切にして欲しいと思っています。画一的な発想や思考性で構成された組織は弱くなってしまいます。
就職活動の面接では、ハキハキ、てきぱきと答える方が印象に残りやすいかもしれません。しかし、自治体の現場に求められるのはそれとは限りません。明日の生活にも困り、なんとか思い切って生活保護の相談に来る市民の方もいます。窓口でそういった方々の対応をする職員には、じっくりと耳を傾けるタイプの方が適しているのではないでしょうか。

大)日本という国家全体が成熟化するなか、企業にも多様性が求められています。組織戦略として自治体も同様であることが分かりました。最後に、オープンワークの社員にメッセージをお願いします。

久)神戸市は本年度から、経験者採用の割合を5割に高めます。昨今、民間企業にも社会貢献の意識が高まっており、これは自治体のミッションに通じる部分があります。企業勤めではこうした想いを充分に遂げられなかった方々にも、ぜひ自治体で再挑戦いただきたいと思っています。
世の中の転職志向が高まるなか、神戸市のように経験者採用に力を入れる自治体が増えるかもしれません。転職は大きな冒険です。私たちも経験者の方を受け入れる際はできる限りのケアをしますが、ミスマッチなく、満足感を持って新しい仕事に取り組んでいただけたらうれしいですね。

大)ありがとうございます。オープンワークとして一層気が引き締まる思いです。久元市長、お忙しい中お時間いただき本当にありがとうございました!

 (トークセッション終わり)

 以上、今回の記事は少し特殊な内容でしたが、「OpenWorkがどのように活用されているのか」「民間企業以外にはどういったニーズがあるのか」といった点について、少しでもイメージいただけたら嬉しく思います。最後までお読みいただきありがとうございました!

 最後に、社員から寄せられたコメントを一部ご紹介します。

・経営者、組織のトップの方がどのようにクチコミに向き合っているのか・実際に取り組んだ施策などリアルに知れて大変面白かった!

・退職者も含めて所属している社員の声に耳を傾けるために、OpenWorkのクチコミが非常に世の中の役に立っていることや、それを活用して採用活動ができるOpenWorkリクルーティングについても影響力があると感じられるよい時間でした。

・官公庁の方も当事者意識を持ってジョブマーケットへの課題を感じていらっしゃること、働きがいづくりに苦心されていることを知り、OpenWorkのサービスの意義や社会への影響力の高まりを感じられて嬉しかった一方、もっと価値のあるサービスを届けていかなくては、と気が引き締まりました。